東京23区で民泊(住宅宿泊事業)を始める前に確認したい5つのこと|区の条例・管理規約・消防
2026.10.12 自由不動産合同会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第108831号)

この記事の要点
- 民泊は届出で始められますが、年180日の上限に加えて、区の条例で営業できる区域や曜日が制限されていることがあります。
- 宿泊中に家主が不在になる場合は、原則として住宅宿泊管理業者への管理の委託が必要です。
- 消防設備は、家主が住んでいるか、建物の種類などで大きく変わります。マンションの一室でも、建物全体に影響することがあります。
たとえば
持て余している空き家を民泊にすれば、ホテルより手軽に始められるはず。ところが区の窓口で「この地域では平日は営業できません」と言われ、年180日を前提にした収支計画が成り立たなくなった――。
民泊(住宅宿泊事業)は、旅館業の許可と違い、届出で始められます。建物を「ホテル・旅館」に用途変更する必要もありません。その手軽さの一方で、東京23区では区ごとのルールが細かく、始めてから「思っていたのと違う」となりやすい事業でもあります。
ここでは、物件を決める前に確認しておきたい5つの点を紹介します。
1. 区の条例で、営業できる区域と曜日が決まっている
住宅宿泊事業法は、営業できる日数の上限を年180日と定めています。そのうえで自治体は、生活環境を守るために、条例で区域や期間をさらに制限できます。東京23区の多くが独自の条例を設けています。
- 中央区:区内全域で、宿泊できるのは土曜日の正午から月曜日の正午までに限られています。
- 新宿区:住居専用地域では、月曜日の正午から金曜日の正午までは実施できません(2026年10月時点)。
- このほか、家主が住んでいるかどうかで扱いを分けている区もあります。
年180日営業できる前提で収支を組んでも、実際に営業できるのが週末だけなら、計画は大きく変わります。物件を決める前に、その区の条例と、物件がどの区域にあたるかを確認します。
規制は強まる方向にある
観光庁は2026年7月、一部の区域で新たな民泊を認めない(営業日数をゼロにする)ことも条例で可能だとする通知を自治体に出しました。報道によると、新宿区は住居専用地域などでの民泊を原則として禁止する条例改正を検討しています。条例は改正が続いているため、計画の時点で必ず区の最新の情報を確認してください。
よくある誤解
- 「民泊はどこでも年180日できる」……180日は法律上の上限です。区の条例で、営業できる日がさらに少なくなることがあります。
2. 住宅としての要件
民泊として届け出られるのは「住宅」です。台所、浴室、便所、洗面設備がそろっていることに加えて、次のいずれかにあたる必要があります。(1)人が生活の本拠として使っている、(2)入居者を募集している、(3)所有者などが随時住むために使っている。
事務所や店舗として使われている建物は、そのままでは対象になりません。
3. 家主がいるか、いないか
宿泊中に家主が不在になる場合や、居室の数が一定を超える場合は、原則として、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者に、管理業務を委託しなければなりません。委託費は収支に直接響くため、最初から計画に入れておきます。
また、家主が住んでいるかどうかは、区の条例の扱いや、次に説明する消防設備の扱いにも関わります。
4. 消防設備
民泊も消防法令に適合している必要があります。消防法令適合通知書は法令上の必須書類ではありませんが、国のガイドラインで、届出の際にあわせて提出するよう求められています。
必要な設備は、家主が住んでいるか、宿泊室の広さ、戸建てか共同住宅かなどで変わります。条件によっては住宅と同じ扱い(住宅用火災警報器など)で済みますが、宿泊施設として扱われると、自動火災報知設備(規模によっては小規模な施設向けの簡易なもので足りる)や誘導灯などが必要になります。
マンションの一室で民泊をする場合、建物全体のうち宿泊に使う部分の割合などによっては、建物全体に設備が必要になることもあります。早めに消防署へ相談することが欠かせません。
関連記事:消防法令適合通知書とは|旅館業・民泊の開業で求められる理由と、取得までの流れ
5. マンションの管理規約と、近隣への周知
分譲マンションでは、管理規約で民泊が禁止されていることが少なくありません。届出の際には、管理規約の写しなど、民泊が禁止されていないことを示す書類を求められます。賃貸物件の場合は、貸主が転貸を承諾していることを示す書類が必要です。
区によっては、届出の前に近隣住民へ計画を知らせ、その記録を提出するよう求めています。
民泊か、旅館業か
営業日数の制限がネックになるなら、旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所)の許可を検討することになります。旅館業なら営業日数の制限はありませんが、建物を「ホテル・旅館」の用途に変える手続きや、より厳しい防火・避難の基準への対応が必要です。
関連記事:旅館・ホテル営業、簡易宿所、民泊、特区民泊の違い|どれを選ぶかで建物のハードルが変わる
当社の「ホテル・民泊 開業診断」では、民泊を計画している物件でも、区の条例や建物の条件を確認し、開業できる見込みを判定します。
よくある質問
- Q. 賃貸で借りている部屋で民泊はできますか。
- 貸主(所有者)の承諾があれば可能です。届出の際に、貸主が転貸を承諾していることを示す書類が必要です。分譲マンションの場合は、あわせて管理規約も確認してください。
- Q. 年180日は、どのように数えますか。
- 毎年4月1日の正午から翌年4月1日の正午までの1年間に、人を宿泊させた日数で数えます。区の条例で営業できる曜日が限られている場合は、実際に営業できる日はさらに少なくなります。
- Q. 届出から、どのくらいで始められますか。
- 区によって異なります。消防法令適合通知書の取得や近隣への周知など、届出の前の準備に時間がかかることが多いため、余裕をもって計画してください。
参考にした資料
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト:住宅宿泊事業者の方へ
- 中央区:住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
- 新宿区:住宅宿泊事業の条例に関する発表資料(PDF)
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト:届出の手続き
- e-Gov法令検索:住宅宿泊事業法施行規則
- トラベルボイス:観光庁、民泊の新規受け入れを認めない条例も可能とする通知(2026年7月15日)
- 東京消防庁:民泊の消防法令上の扱いに関する案内(PDF)
- 消防庁:住宅宿泊事業の届出に伴う消防法令適合通知書の交付事務に関する通知(消防予第466号、PDF)
記事は一般的な解説です。個別の物件で開業できるかは、条例や建物の状況によって変わります。